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大阪高等裁判所 昭和34年(ネ)454号 判決 1959年10月30日

控訴人 大城正一

被控訴人 白石純之助

主文

原判決をつぎのとおり変更する。

控訴人は被控訴人に対し金一三三、二三七円及びこれに対する昭和三一年七月一日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

被控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じこれを十分しその一を被控訴人の負担とし、その余は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の主張、証拠の提出、援用、認否は、以下に補充する外、原判決事実記載と同一であるから、ここにこれを引用する。被控訴人は当審証人高本幸次郎の証言を援用し、

控訴人は、

「甲第一号証の成立を認める。

控訴人が甲第一号証(本件手形)に裏書したのは、当時、大工の池本義明は阿漕能孝より店舗改造工事を請負つていたところ、池本は控訴人に対し、右請負代金支払のため交付を受けた本件手形を他人に割引いて貰いたいから裏書をしてくれと依頼したので、控訴人がこれに応じたのである。」

と述べ、

当審における控訴人本人の供述を援用した。

理由

成立に争ない甲第一号証、原審証人高本幸次郎の証言ならびに原審証人白石うの当審証人高本幸次郎の各証言の各一部によれば、被控訴人は、昭和三一年四月一日、訴外阿漕能孝に対し、高本幸次郎を介して、弁済期日を同年六月三〇日利率を月五分と定めて金一五〇、〇〇〇円を貸付けるということで金額一五〇、〇〇〇円の左記約束手形一通(本件手形)の交付を受けたが、実際は、金一五〇、〇〇〇円に対する貸付の日より弁済期日までの月五分の割合による三ケ月分利息として金二二、五〇〇円を天引し阿漕能孝に対し金一二七、五〇〇円を交付したにすぎない事実を認めることができる。この認定に反する原審証人白石らの当審証人高本幸次郎の各証言は前掲証拠に照し信用できない。

金額 一五〇、〇〇〇円

支払期日 昭和三一年六月三〇日

支払地振出地 大阪市

支払場所 協栄信用組合

振出日 昭和三一年四月一日

振出人 阿漕能孝

受取人 池木義明

第一裏書裏書人 同

第一裏書被裏書人 大城正一

第二裏書裏書人 同

第二裏書被裏書人 高本幸次郎

第三裏書(白地式)裏書人 福文商事代表高本幸次郎

従つて利息制限法第二条により、右天引額中、債務者受領額に対する同法第一条第一項所定の利率により計算した五、七三七円(円以下切捨)を超える一六、七六三円は元本の支払に充てたものとみなされ、阿漕能孝は被控訴人に対し一三三、二三七円の貸金債務を負担するに至つたものと認められる。

よつて、控訴人が、阿漕能孝の被控訴人に対する右債務について、保証したか否かについて判断する。

前記各証拠によれば、右貸借を仲介した高本は債務者阿漕に対し保証人二名を立てることを要求した結果、同人は予てより自分も懇意であり右高本とも知合である控訴人及び池本義明に右金借の事実を伝えて前記差入手形に両名の裏書を得たものであると推認することができる。右認定に反する当審における控訴人の供述は信用しない。

主たる債務者が貸金債務支払のために振出す約束手形に、右手形振出の事情を知りながら、いわゆる隠れた手形保証として、裏書をした者が、単に裏書人としての手形上の債務を負担するにすぎないか、或は更に進んで手形の原因関係である貸金債務について民法上の保証債務を負担するかは、具体的な場合について当事者の意思解釈によつて決定される問題であるが、特に反対の意思の認められない限り、民法上の連帯保証債務を負担するものと認めるのが相当である。

従つて、反対の意思の認められない本件において、控訴人は、本件貸金債務について民法上の連帯保証債務を負担したものと認められる。

しかし、控訴人が本件保証契約成立当時、主たる債務に関し月五分の割合の利息の約定があつたことを認識していたことについては何等の証拠もない。他に、控訴人が被控訴人に対し年五分を超える割合の遅延損害金支払債務を負担する理由について何等の主張もない。

よつて、被控訴人の本訴請求は、控訴人に対し金一三三、二三七円及びこれに対する昭和三一年七月一日から支払済まで年五分の割合の損害金の支払を求める限度において正当として認容し、その余は失当として棄却すべく、原判決中右と異なる部分は不当であるからこれを変更し、民事訴訟法第三八六条第九六条第九二条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 石井末一 小西勝 井野口勤)

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